大判例

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大阪高等裁判所 昭和29年(う)667号 判決

原判示事実は、原判決の挙示する証拠によつてこれを認定するに十分である。右の証拠によれば、被告人原稔は、近畿相互銀行の自動車運転者であつて、相被告人石伏三良の仲介により、会社のためビイツク二台を購入したところ、登録のないいわゆる無籍物であつたため、相被告人今西二郎、同植村信一及び石伏と自動車検査証を偽造しようと共謀したのみならず、原判示のようにその実行行為にも参加したことが明らかであるから、原判決が被告人原を公文書偽造罪の共犯と認定したのは正当である。記録を精査しても、原判決には所論のような事実誤認の点はないから、論旨は理由がない。

次に職権をもつて案ずるに、原判決は、その第二において、被告人今西二郎に大阪府知事名義をもつて自動車検査証を作成して再交付する権限ありとし、同被告人が内容虚偽の再交付の自動車検査証を作成した行為に対して刑法第百五十六条を適用しているが、その第三において、「(一)被告人今西、同植村、同寺本、同安在鎬は、共謀の上、行使の目的を以て、大阪府知事作成名義の自動車検査証を不正に作成しようと企て、同年三月二十六日頃、前顕陸運事務所に於いて、被告人今西が情を知らない同事務所登録課再交付係家留成明(被告人今西の後任者)の手元に、被告人植村、同寺本よりかねて用意されて居た一九四八年式シボレーに関する虚偽の自動車検査証再交付申請書、自動車検査記載簿等を提出し右家留が被告人今西を信頼しているのに乗じ、あたかも正規の手続に依り、検査証再交付の申請があつたものの如く装い、その頃同所において、右家留をして右自動車に対する大阪府知事作成名義、大阪銀行使用及所有名義、大313875の自動車検査証一通を再交付として作成せしめ、以つてこれの偽造を遂げ、(二)被告人植村、同寺本、同安在鎬は共謀の上、その頃前記自動車の売却に際し同市東区北浜五丁目二十二番地大阪銀行において、同銀行総務副長広常五六に対し桜井善治を通じ右偽造に係る自動車検査証一通を真正に成立したものの如く装つて提出行使し、」と判示し、これに刑法第百五十五条第一項、第六十条と、第百五十八条第一項、第百五十五条第一項、第六十条とを適用して牽連犯とし、更に第四の(一)として、「被告人小林、同今西、同植村、同寺本、同安在鎬は、共謀の上、行使の目的を以つて擅に同年四月五日頃、前記陸運事務所に於いて、被告人今西が情を知らない前記家留の手元に、被告人寺本、同植村がかねて作成した一九三九年式クライスラー一台に対する虚偽の自動車検査証再交付申請書類を提出し、第三の(一)記載と同様の事情の下に、その頃同所において、右家留をして右自動車に対する大阪府知事作成名義、真木化学工業株式会社使用及所有名義の大313085の自動車検査証一通を再交付として作成せしめ、以つてその偽造を遂げ」と判示しこれに刑法第百五十五条第一項、第六十条を適用している。すなわち、原判決は、被告人今西及びその後任たる家留成明において、大阪府知事名義をもつて自動車検査証を再交付のため作成する権限ありと判断し、それを前提として、被告人今西の公文書無形偽造については、刑法第百五十六条を適用し、前記家留に対して虚偽の申立を為し、同人をして内容虚偽の公文書を作成させた行為については、同法第百五十五条を適用したのである。しかし、公務員の身分を有しないものが、前記のような職務権限を有する家留に対し、虚偽の内容を記載した自動車検査証再交付申請書を提出し、制規の手続によつて検査証再交付の申請をするもののように装い、情を知らない同係員をして大阪府知事名義をもつて虚偽の自動車検査証を再交付として作成交付させた行為は、刑法第百五十五条又は同法第百五十六条の間接正犯として処罰するべきではなく、従つて右の検査証を行使しても偽造公文書行使罪に当らない(最高裁判所昭和二七年一二月二五日第一小法廷判決、判例集第六巻第一二号一三八七頁参照)。そして自動車検査証は、刑法第百五十七条にいわゆる権利義務に関する公正証書の原本又は免状、鑑札、旅券のいずれにも当らない。右の行為は、当審において検察官から提出された「予備的訴因等の追加申立書」記載の如く、道路運送車輛法第百七条第一号にいわゆる詐偽その他不正の手段により同法第七十条(自動車検査証の再交付)の規定による検認を受けた者に該当すると解すべきである。原判決は、この点において法令の適用を誤つており、その誤が判決に影響を及ぼすべきこと明らかであるから、原判決は破棄を免れない。

よつて、被告人小林、同今西、同植村に関する量刑不当の主張に対する判断はこゝでは省略し、原判決中同被告人等に関する部分を刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十条に従つて破棄し、同法第四百条但し書によつて更に判決をし、被告人石伏、同原については、同法第三百九十六条によりその控訴を棄却する。

罪となるべき事実及び証拠の標目は、

原判決第三の(一)(二)及び同第四の(一)を、

第三(一)被告人今西二郎、同植村信一及び原審相被告人寺本正夫、同安在鎬は、共謀のうえ、無登録自動車売買のため不正の手段によつて自動車検査証を取得しようと企て、昭和二十七年三月二十六日頃、大阪市西区江戸堀上通二丁目五番地日産ビル内、大阪府陸運事務所において、同事務所登録課再交付係家留成明に対し、被告人植村及び寺本が作成した無登録の一九四八年式シボレー一台につき自動車検査証を紛失し、その再交付を求める旨の虚偽の自動車検査証再交付申請書、自動車検査記録簿等を提出し、右家留が被告人今西を信頼しているのに乗じ、正規の手続により検査証再交付の申請があつたものゝように装い、同人を誤信させ同月二十七日附をもつて、右自動車に対する大阪府知事作成名義、株式会社大阪銀行使用及び所有名義、自動車登録番号大313875の自動車検査証一通を再交付として作成させてその交付を受け、

第四(一)被告人小林武男、同今西二郎、同植村信一及び前記寺本正夫、安在鎬は、共謀のうえ、前同様の目的をもつて、同年四月五日頃、前記事務所において、前記家留に対し、植村と寺本とがかねて作成しておいた無登録の一九三九年式クライスラー一台につき、自動車検査証を紛失し、その再交付を求める旨の虚偽の自動車検査証再交付申請書類を提出して、前同様の事情のもとに、家留をして右自動車に対する大阪府知事作成名義、真木化学工業株式会社使用及び所有名義、自動車登録番号大313085の自動車検査証一通を再交付として作成させてその交付を受け

と訂正するほか原判決記載のとおりである。

(裁判長判事 松本圭三 判事 山崎薫 判事 西尾貢一)

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